若年層に多い!?
虫垂炎(盲腸)とは
大腸の一番奥、右下腹部にある虫垂が、細菌・ウイルス感染によって閉塞するなどして炎症を起こした状態を「虫垂炎(盲腸)」と言います。
年齢別では10~20代の若い人の発症することもありますが、中高年でも発症しうる病気ですので、特に若年層だけに多いという訳ではありません。
特徴的なのが、ヘソのあたりで発生した痛みが、時間の経過とともに右下腹部へと移動するという点です。
軽度であれば抗菌薬による治療で回復が期待できますが、放置して重症化した場合には腹膜炎や敗血症など、命にかかわる疾患を合併することもあります。
子どもの虫垂炎は気づきにくい!?
もともと10代、20代で発症するケースがある一方で、10歳以下、幼稚園児でも発症することがあります。
そして、子どもが発症した場合には、腹部の痛みや発熱などの他に症状があっても、うまく伝えられないということもあるため、不機嫌な状態がつづいている・わけもなく泣いているといった場合には、虫垂炎を含めた疾患を疑い、お早めに当院にご相談ください。
虫垂炎の主な原因
虫垂炎の原因には以下のようなものがありますが、はっきりと原因を特定できないことも少なくありません。検診などで服用したバリウムが原因となることもあります。
虫垂の閉塞
虫垂炎の最大の原因です。
虫垂に便や異物(植物の種など)が入り込み、閉塞することで細菌・ウイルス感染が起こり、炎症をきたすものと考えられます。
生活習慣の乱れ
食べ過ぎや飲み過ぎ、寝不足、過労、運動不足などの生活習慣の乱れも、虫垂炎の原因になることがあります。
ストレス
ストレスによって体内の好中球および活性酸素が増加することで、虫垂の組織がダメージを受けることがあります。
便秘
便秘によって虫垂が圧迫され、炎症が引き起こされることがあります。
右下腹部が痛いのは
虫垂炎の症状かも?
虫垂炎の特徴的な症状として、ヘソやみぞおちあたりで発生した痛みが、時間の経過(1日前後)とともに右下腹部へと移動するという点が挙げられます。さらに時間が経過すると、痛みの増大・範囲拡大、発熱などの症状が現れます。症状がひどく、歩くことさえできないケースも見られます。
- ヘソ、みぞおちの痛み
- 右下腹部の痛み
- むかつき、食欲不振
- 発熱
- 歩行困難
- 下痢を繰り返す
緊急性が高い急性虫垂炎は早めに受診しましょう
虫垂炎を放置していると、発症後36時間以内に虫垂が破裂する可能性があります。腹膜炎や敗血症など、命にかかわる疾患を合併することもあるため、早急な受診・治療が必要です。
夜間であれば、救急外来を受診してください。
虫垂炎に
なりやすい人の特徴
虫垂炎は、年齢に関係なく発症し得る病気です。
10代や20代で発症することもありますが、中高年の方でも虫垂炎になることがあります。
虫垂炎の検査
症状や直近の食事、既往歴、服用中のお薬などについてお伺いし、血液検査、超音波検査、CT検査などを行い、診断します。
お腹のどこの部分が痛いのかご自身で観察しましょう
受診時には医師が触診を行いますが、分かる範囲で、痛みなどの症状について詳細にお聞かせください。
虫垂炎の場合には、以下のような痛みが見られます。
- ヘソ、みぞおちのあたりで発生した痛みが、約1日をかけて右下腹部へと移動する
- 圧迫した時に硬くなっていること(筋性防御)が確認できる
- 圧迫し、急に離した時の痛み(反跳痛)がある
腹部超音波検査(腹部エコー)
虫垂炎が疑われる場合に特に有効となるのが、腹部超音波検査です。炎症の状態を詳しく観察・評価することができます。
腹部超音波検査は、痛み・被ばくの一切ない検査です。お子様、妊娠している方でも安心して受けられます。
CT検査
CT検査であれば、似た症状を持つ「憩室炎」との鑑別をした上で、ほぼ確実に診断できます。
憩室炎であれば薬物療法による治療を行いますが、虫垂炎の場合は緊急手術が必要になることもあるため、迅速に適切な治療を行うためには、この両疾患の鑑別が非常に重要になります。
当院では、高精細な画像を短時間で撮影できる16列マルチスライスCT (SPRIA ADVANCE)を導入しております。75cmの広い開口径により圧迫感が軽減されるため、閉所恐怖症の患者様でも利用しやすくなっています。
虫垂炎の治療
虫垂炎の主な治療には、薬物療法と手術があります。
薬物療法
炎症が軽度であれば抗生剤を投与します。抗生剤によりお腹の痛みが和らいできます。
ただし、腹痛などの症状が再発することもあるので、経過を診ながら治療を行っていきます。
手術
中等度~高度の場合には、全身麻酔による手術が必要になります。手術が必要と判断した場合には、速やかに高度医療機関へとご紹介します。腹腔鏡または開腹による手術が行われます。
職場復帰、食事について
職場復帰は、少なくとも「痛みがなくなってから」
虫垂炎の病状、患者様のお仕事の内容によって異なりますが、数日間のお休みが必要な場合もあれば、仕事を継続しながら通院していただくケースもあります。
少なくとも、痛みがなくなるまではお仕事をお休みされることをおすすめします。
絶食は必要?
軽度であれば、消化の良いものを適度に食べることができます。もちろん、食べ過ぎや早食いなどは避けねばなりません。
炎症の程度が強い場合には、絶食が必要になることがあります。
いずれの場合も、病状を見ながら徐々に普段の食事へと戻していきます。
よくあるご質問
そもそも「虫垂」とは何ですか?
虫垂とは、大腸の一番奥、右下腹部にある小さな袋状の臓器のことです。善玉菌の住処であり、腸内細菌叢(腸内フローラ)が乱れた時に、その正常化を図る役割を担っていると言われています。
虫垂と盲腸は、違うものですか?
虫垂は盲腸のさらに奥にある紐状の組織であり、正確には「違うもの」です。
虫垂炎のことを一般に「盲腸」と呼ぶため、同じものだと思われているようです。
虫垂炎を予防することはできますか?
虫垂炎の最大の原因と言える「虫垂の閉塞」を100%防ぐということはできません。
ただ、食べ過ぎ・飲み過ぎ・寝不足・過労・運動不足などの生活習慣の乱れ、ストレス、便秘などもが原因になることがあるため、これらを改善することが、虫垂炎のリスクを下げることにつながると考えられます。