咳が続く?長引く咳?
熱はない?原因や
体への影響は?
咳は、ウイルスや細菌、埃などの異物の身体への侵入を防ぐ役割を担っています。埃っぽい場所で自然と咳が出ることがあるように、身体を守るための生理現象であるため、一時的なものであればそれほど心配はいりません。
ただし、長引く咳には注意が必要です。何らかの疾患が原因になっている可能性が疑われるためです。ではまず、咳にはどのような種類のものがあるか、ご紹介します。
乾いた咳(乾性咳嗽)
ケンケン、コンコンといった、痰の絡まない乾いた咳です。咳によって喉の粘膜が刺激され、また咳が出るといったことでお悩みになるケースが多いようです。
考えられる病気としては、咳喘息、気管支喘息、アトピー咳嗽、逆流性食道炎、間質性肺炎、気管支結核、喉頭アレルギーなどが挙げられます。
痰が絡む咳(湿性咳嗽)
ゴホゴホ、ゲホゲホといった、痰の絡んだ湿った咳です。痰を出してもまた同じような咳が出て、不快な状態が続きます。
考えられる病気としては、副鼻腔炎、慢性気管支炎、気管支拡張症、気管支喘息などが挙げられます。肺がんが原因になることもあります。
熱はないのに咳が続く
熱はないのに咳だけが続くという経験をしたことのある方も多いのではないでしょうか。
疑われる疾患としては、ウイルス・細菌の感染症、咳喘息、気管支喘息、肺炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)などが挙げられます。肺がんや肺結核が原因になることもあります。
長引く咳を伴う病気と
その症状
感染後咳嗽
(かぜ、気管支炎などの
後に咳が続く)
風邪や新型コロナウイルス感染症、マイコプラズマ気管支炎などの感染症になり、その後長引く咳(咳嗽)のことを指します。
喉に炎症があるため、ちょっとした刺激でも咳が繰り返されます。
主な症状
- 発熱、鼻水、頭痛などの症状が軽快した後に咳だけ残る
- 3週間以上咳が続く
風邪をひいた後に咳だけ残ることは、珍しいことではありません。通常は自然に治りますが、必要に応じて鎮咳薬などを処方します。
副鼻腔炎・後鼻漏
「副鼻腔炎」とは、鼻腔の奥にある副鼻腔の粘膜で炎症が起こっている状態です。
しばしば、鼻水が喉の方へと伝い流れる「後鼻漏」という症状を伴います。その他、鼻詰まり、顔面の痛み、頭が重い感じといった症状が見られます。
主な症状
- 鼻水、鼻詰まり
- 後鼻漏
- 顔面の痛み
- 頭が重い感じ
- 咳
風邪を原因として副鼻腔炎を発症するケースが多くなります。
また、後鼻漏が気管支に入り込み、気管支炎を合併するようなケースでは、咳症状が見られます。
逆流性食道炎
胃酸、胃の内容物が繰り返し逆流し、食道粘膜で炎症を起こす病気です。
食道上部や喉の粘膜が荒れることで、咳が出ます。加齢に伴う下部食道括約筋の緩み、胃酸の過剰な分泌などを主な原因とします。
主な症状
- 喉のイガイガ、咳
- 食べ物が喉につかえる感じ
- 胸やけ、胃もたれ
- ゲップ、呑酸
- 食後の胃の不快感
- 早期飽満感
早期飽満感とは、食べ始めてすぐに満腹感を感じ、本来摂るべき量を食べられないことを指します。
薬物療法、生活習慣・食習慣指導による改善を目指します。
肺炎
細菌やウイルスの肺の感染、自己免疫疾患、アレルギー、薬剤、職業性粉塵などを原因として発症します。ご高齢の方は重症化するリスクが高く、命を落としてしまうこともあります。
主な症状
- 38℃以上の高熱
- 咳、痰
- 息切れ
- 胸痛
痰は、黄色や緑色をしていることが多くなります。
肺がん
長引く咳は、肺がんの典型的な初期症状です。
風邪をひいていないにもかかわらず2週間以上咳が続く、という場合には医療機関を受診してください。
主な症状
- 特に原因の思い当たらない2週間以上続く咳
- 痰の絡んだ咳
- 血痰
- 動悸
- 胸痛
肺がんは60歳以上の男性に多いがんです。胸部レントゲン検査、胸部CT検査などによる早期発見に努めます。
結核
結核菌が気管支、肺に感染することで発症します。
免疫力が低下している人に起こりやすく、2週間以上咳が続くという場合にはすぐに医療機関を受診してください。
主な症状
- 痰の絡んだ咳
- 血痰
- 発熱
- 息苦しさ
- 倦怠感
まわりの人へと感染させてしまうことがあるため、入院した上での治療が必要になります。
咳ぜん息・気管支喘息
気道の慢性的な炎症があり、さまざまな刺激によって気管支が発作的に狭くなり咳や喘鳴(ゼイゼイ、ヒューヒューという呼吸)が認められる病気を「気管支喘息」と言います。咳喘息の場合は、気管支の狭窄はあまりなく、咳のみを症状とします(喘鳴もありません)。
主な症状
- 咳が続く
- ゼイゼイ、ヒューヒューという呼吸(喘鳴)
- 呼吸困難
咳・呼吸にかかわる症状は、夜間から明け方にかけて強くなる傾向があります。
慢性閉塞性肺疾患(COPD)
主に長期にわたる喫煙を原因として肺で炎症が生じ、肺気腫や慢性気管支炎などの認められる病態のことを指します。
階段を上がる、早足で歩く程度の運動によって息切れが生じます。
主な症状
- 痰の絡んだ長引く咳
- 軽い運動で息切れする
- ゼイゼイ、ヒューヒューという呼吸(喘鳴)
悪化すると、息を吸うことよりも、吐くことに辛さを感じるようになります。
アトピー咳嗽
(アレルギー)
気管壁表層の咳受容体の感受性が亢進することで、本来であれば問題のない刺激(会話、煙など)によって咳が出ます。
気管支喘息のような喘鳴、呼吸困難は認められず、咳のみを症状とします。
主な症状
- 長引く乾いた咳
- 喉の痛み
- 会話をしただけで咳が出る
喉の痛みや咳は、夕方から夜間にかけて出やすくなります。
2週間以上の続く咳は異常?
受診の目安
またその他、2週間に満たない場合でも、以下のような症状を伴う場合には早めに受診をする必要があります。
- 血痰が出た
- 黄色、緑色の痰が出た
- 呼吸のしづらさを感じる
- 階段を上るだけで息があがる
- 胸痛がある
- 咳が日に日にひどくなっている
長引く咳や咳が続くときに
行う検査
咳が続く場合には、以下のような検査を行い、その原因を特定します。
胸部レントゲン検査
肺炎、肺がん、肺結核、心不全などの病気の発見に役立ちます。当院では、AIによる画像診断を導入しております。
胸部CT検査
肺炎、肺がん、肺結核、非結核性抗酸菌感染症、肺気腫、気管支拡張症、心不全などの病気の発見に役立ちます。
肺がんなど、CT検査であればレントゲン検査よりも早期のうちに発見することが可能です。当院では、高性能なCTを導入しております。
咳が続く・長引く咳の
対処法や応急処置
咳が続く場合には、早めに医療機関を受診することが大切です。
とはいえ、咳の出始めで少し様子を見たい場合、夜間に強くなりすぐに受診できない場合もあるかと思います。
そういった場合に患者様ご自身で取り組める対処法、応急処置をご紹介します。
喉の保湿
水分補給、マスクの装着、加湿器の使用などにより、喉を保湿してあげましょう。のど飴、ハチミツなどでも、咳の軽減が期待できます。
呼吸法の工夫
腹式呼吸をすると、横隔膜が働くことで、呼吸が楽に感じられることがあります。
腹式呼吸ができない場合には、息を吐く時だけ口をすぼめる呼吸を試してみてください。気管支が広がり、呼吸が楽になったり、息切れが軽くなることが期待できます。
禁煙
喫煙は、気道の炎症を悪化させます。できる限り、禁煙しましょう。
刺激物・アルコール・
カフェインを控える
刺激物は、喉の炎症・咳を悪化させるおそれがあります。またアルコール・カフェインは利尿作用によって、痰の粘り気を強くします。いずれも、できる限り避けてください。
市販薬の使用
咳止めなどの市販薬を使って、症状を和らげます。ただし常用はせず、時間を見つけて医療機関を受診するようにしてください。