鼠径ヘルニア

下腹部の足付け根あたりに
ぽっこり膨らみ!?
鼠径ヘルニアとは

下腹部の足付け根あたりにぽっこり膨らみ!?鼠径ヘルニアとは鼠径ヘルニアとは、本来であればお腹の中にある腹膜や腸の一部が筋肉の隙間から飛び出てしまう病気です。下腹部の脚の付け根のあたりの皮膚が、ぽっこりと膨らみます。
鼠径ヘルニアは大きく、以下のように分類されます。

外鼠径ヘルニア

もっとも多いタイプの鼠径ヘルニアです。
内鼠径輪から腹膜・内臓が飛び出すことで、鼠径部に膨らみが生じます。
男性の場合には、外鼠径ヘルニアを放置することで腹膜・内臓が陰嚢へと到達し、陰嚢が膨れ上がることもあります。

内鼠径ヘルニア

比較的、中高年の男性に多いタイプの鼠径ヘルニアです。
下腹壁動静脈の内側の筋肉が弱くなり、腹膜・内臓が飛び出すことで、鼠径部に膨らみが生じます。
膀胱脱出を合併することがあり、手術の際にはその損傷のリスクが高くなります。放置した場合には、内臓が損傷するリスクも高まります。

大腿ヘルニア

比較的、中高年の女性に多いタイプの鼠径ヘルニアです。
大腿輪から腹膜・内臓が飛び出すことで、鼠径部のやや下側に膨らみが生じます。腸が詰まり血流不全を起こす「嵌頓」のリスクが高いヘルニアであるため、早期から手術を検討します。

その他

閉鎖孔ヘルニア

比較的、痩せ型の高齢女性に多いタイプの鼠径ヘルニアです。
恥骨と坐骨によって形成される穴から腹膜・内臓が飛び出しますが、外から見た場合の変化はほぼありません。そのため、診断にはCT検査が必要になります。

臍ヘルニア

臍(へそ)から臓器が脱出し、「出ベソ」の状態となります。
子ども(3歳まで)の場合は自然治癒が期待できますが、3歳を超えると自然治癒の確率が低下するため、就学までに手術を検討することがあります。成人の場合は嵌頓のリスクが高いため、手術が必要となります。

腹壁瘢痕ヘルニア

腹部手術をした傷の筋膜が年月の経過とともに脆弱するなどして、そこから臓器が脱出します。立った状態であれば腹圧によって膨らみが認められる一方で、横になると腹圧が低下し膨らみが少なくなるという特徴を持ちます。

鼠径ヘルニアの主な原因

鼠径ヘルニアの原因には、以下のようなものがあります。

先天的なもの

鼠径部の腹膜が癒合せずに生まれ、陰嚢、大陰唇へとつながる鼠径管が開いていることを原因として鼠径ヘルニアを発症することがあります。

加齢に伴う筋肉・筋膜の衰え

加齢によって筋肉・筋膜が衰えると、内臓を支えることが難しくなり、鼠径ヘルニアを発症することがあります。
加齢は、鼠径ヘルニアの最大の原因と言えます。

仕事・運動による筋肉・腹膜への影響

長時間の立ち仕事、登山・マラソンなどの運動によって腹部の筋肉、腹膜に負担がかかり、鼠径ヘルニアを発症することがあります。

慢性的な症状・障害

慢性的な咳や便秘、排尿障害などによって鼠径ヘルニアを発症することがあります。

鼠径ヘルニアの
膨らみは痛い!?
症状チェック

鼠径ヘルニアの膨らみは痛い!?症状チェック

鼠径ヘルニアの症状は、以下のような経過を辿ります。

  1. 鼠径部の不快感や軽い痛みが現れる
  2. 立った時(腹圧が高くなった時)に、鼠径部にやわらかい膨らみが出るようになる
  3. 指で押さえると引っ込むが、だんだんと腫れが硬くなってくる・痛みも強くなってくる
  4. 指で押さえても引っ込まなくなる(嵌頓)

痛みが強く、歩行が困難になることもあります。また指で押さえても引っ込まない「嵌頓」は、非常に危険な状態です。腸閉塞、腸壊死、腹膜炎などを合併するリスクが高くなります。

女性に多い!?
年齢別の
鼠径ヘルニアの種類

全体を見ると、鼠径ヘルニアの発症数は男性の方が5~10倍と、かなり多くなります。しかし若年層では、その差がほとんどなくなります。
女性の鼠径ヘルニアを年代別に分けて、それぞれの傾向をご紹介します。

20~40代はほとんどが「外鼠径ヘルニア」

20~40代の女性に見られる鼠径ヘルニアのほとんどが、外鼠径ヘルニアです。
生理期間に膨らみが大きくなり、生理が終わると膨らみが小さくなる、ということを繰り返すケースが多くなります。

50代以降は「内鼠径ヘルニア」「大腿ヘルニア」が増えてくる

50代以降の女性の場合には、外鼠径ヘルニアが多いものの、内鼠径ヘルニア・大腿鼠径ヘルニアの割合が増えてきます。
特に大腿ヘルニアの多くは、高齢女性に発症します。嵌頓に至り緊急手術が必要になることもあります。

鼠径部ヘルニアに
なりやすい人の特徴

鼠径ヘルニアの原因から考えると、以下のような人は、そうでない人よりも発症リスクが高くなると言えます。

  • 40歳以上(中でも50~70代の男性)
  • 重い物を持つなど、力仕事をしている
  • 長時間の立ち仕事をしている
  • 慢性的な便秘
  • 太っている
  • 前立腺の肥大がある
  • 多産婦、出産後
  • 喫煙をしている

鼠径部ヘルニアの検査

鼠径ヘルニアが疑われる場合には、以下のような検査を行います。

患部の視診・触診

鼠径部ヘルニアの検査問診の上、患部の視診と触診を行います。膨らみの位置、硬さなどを確認します。
基本的には、これにより診断が可能です。

腹部超音波検査(腹部エコー検査)

鼠径部ヘルニアの検査ヘルニアの種類を特定したり、他の病気を除外するため、腹部超音波検査を行います。

CT検査

鼠径部ヘルニアの検査腹部エコー検査で分かりにくい時は、CT検査を追加することがあります。
その他、鼠径部以外、閉鎖孔ヘルニア、臍ヘルニア、腹壁瘢痕ヘルニアの診断にCT検査は大変有用です。

鼠径部ヘルニアの
日帰り手術

みずかみクリニックでは、鼠径ヘルニアの日帰り手術として、メッシュ・プラグ法を行っております。
入院不要で局所麻酔下で行える、患者様のお身体への負担の少ない手術です。

メッシュ・プラグ法

現在主流となっている手術法のひとつです。飛び出た部分に人工膜(ポリプロピレンメッシュ)を張り合わせる手術です。
手術後の抜糸などは不要で、低侵襲であるため、手術直後から歩行ができます。

手術の流れ

手術当日

1ご来院

事前に診察を受けていただき、検査・診断後、手術日を決定します。
当日はご来院後に血圧を測り、手術着へと着替えていただきます。

2麻酔

仰向けで寝ていただき、麻酔をかけていきます。麻酔は局所麻酔薬と静脈麻酔薬(鎮静剤)を併用します。

3手術開始

手術を開始します。通常、30~60分で終了します。

4リカバリー室

リカバリー室でお休みいただきます。

5ご説明・帰宅

手術についての説明を受けていただき、問題なければお帰りいただけます。
ご自宅での過ごし方なども説明いたしますので、お守りくださいますようお願いします。

鼠径ヘルニアの手術前後の
生活習慣
(喫煙・アルコールなど)
注意点

お一人おひとり、改めてご説明いたしますが、手術前・手術後には以下のような点に注意していただく必要があります。

手術前

  • 喫煙をしている方は、手術の1週間前から禁煙してください。
  • 手術の3日前から禁酒をしてください。
  • 抗凝固剤(血液をサラサラにするお薬)の服用については、個別に指示いたします。自己判断をしないでください。
  • 陰部、太腿の毛などは剃らないでください。化膿の原因になることがあります。

手術後

  • 手術当日は運動を控え、シャワーのみとしてください。
  • 翌日から散歩程度の軽い運動、入浴を再開できます。
  • 身体を動かす時に痛みが出ますので、処方した痛み止めをご使用ください。
  • 食事は、当日より普段通り摂っていただけます。ただし、手術後1週間は禁酒をしてください。
  • 腫れが引いてからも、傷口に硬さが残りますが、3カ月ほどでやわらかくなります。
  • 内出血を起こすことがありますが、2~3週間程度で治まります。
  • 発熱、傷口のひどい腫れ、出血が止まらない、激痛などが生じた時には、すぐに当院にご連絡ください

鼠径ヘルニアの再発について

鼠径ヘルニアの手術後、約2%程度のケースで再発が認められます。

再発の原因

鼠径ヘルニアの手術後2年間で再発した場合には、メッシュのズレなどが原因となることが多くなります。
それ以降の再発については、初回の発症時と同様に、加齢や腹圧が高くなる運動・仕事などが原因と考えられます。

再発した場合の治療・対応

再発した場合には、再度手術が必要になります。
再発の場合は手術の難易度がより高くなります。当院では再発した鼠径ヘルニアの手術も行っておりますが、リスクが大きいと判断した場合、患者様がご希望する場合には、病院をご紹介いたします。