あな痔(痔瘻)

あな痔(痔瘻)とは

あな痔(痔瘻)とはあな痔とは、肛門と直腸のあいだの歯状線に存在するくぼみ「肛門陰窩」に便が入り込むなどして細菌感染を起こし、そこから侵食が進みお尻の皮膚とつながるトンネルが形成される病気です。
痛み、熱感とともにトンネルから膿が出て下着が汚れるなど、QOLへの影響が大きく、放置してトンネルが枝分かれするといったケースも見られます。また、ごく稀ですががんの原因になることもあります。
症状に気づいた時には、お早めに当院の肛門科を受診してください。

あな痔(痔瘻)の主な症状

あな痔の症状には、以下のようなものがあります。

  • 肛門周囲の痛み、熱感、腫れ
  • お尻から膿が出る
  • 下着が汚れる
  • 発熱(38~39℃)

初期・中期・末期の症状

初期

肛門陰窩に便が入り込むなどして、細菌感染が起こり、侵食が始まります。肛門陰窩の奥には、膿の袋ができます。

中期

膿の袋がやぶれ、トンネルから膿が出ます。体調が良くない時などは、化膿しやすくなります。

末期

排便のたびに肛門陰窩に便が入り込み、細菌感染・炎症が起こります。
稀ではありますが、がんを発症することがあります。

あな痔(痔瘻)の原因

頻繁な下痢によって肛門陰窩へと細菌が侵入し、膿瘍を形成すること(肛門周囲膿瘍)が主な原因となります。下痢を引き起こすリスク因子としては、ウイルス・細菌感染、水分の摂り過ぎ、アルコールの飲み過ぎ、冷えなどが挙げられます。また大腸がんや過敏性腸症候群などの疾患によって下痢が引き起こされることもあります。

あな痔(痔瘻)に
なりやすい人の特徴

原因から考えると、以下に該当する人は、そうでない人よりあな痔になりやすいと言えます。

下痢が続いている人

もっとも注意しなくてはならないのが、慢性的な下痢の人、治るけれどすぐに下痢を繰り返してしまう人です。下痢をすることで、肛門陰窩に細菌が入り込みやすくなります。

切れ痔が慢性化している・悪化している人

切れ痔が慢性化している人は、その傷から細菌が感染し、あな痔へと進展してしまうことがあります。また慢性化していなくても、傷が深い場合には同様に感染のリスクが高くなります。

お酒をよく飲む人

アルコールの摂り過ぎは、下痢の誘因です。お酒を飲むと必ずと言っていいほど下痢になる、という人は量・頻度を改善してください。

あな痔(痔瘻)の分類

あな痔は、さまざまな分類方法があります。以下、隅越分類に基づいたあな痔の分類を行います。

I型(皮下または粘膜下痔ろう)

瘻管(トンネル)が、直腸粘膜と内肛門括約筋の間に存在するタイプです。

II型(内外括約筋間痔ろう)

瘻管が、内括約筋と外括約筋の間に存在するタイプです。

III型(坐骨直腸窩痔ろう)

外肛門括約筋を貫いた瘻管が、複雑に走行しているタイプです。

IV型(骨盤直腸窩痔ろう)

肛門挙筋の上に瘻管が走行しているタイプです。

なお、例外的なタイプとして、クローン病に合併したあな痔があります。直腸の潰瘍から、上記のいずれにも該当しない、複雑な形のトンネルを形成します。

あな痔(痔瘻)の治療

あな痔の治療では、手術が必要になります。瘻管(トンネル)の長さ、位置、枝分かれの状況などによって、適切な術式を使い分けます。

瘻管切開開放術(Lay Open法)

後方にできたあな痔の治療に適した術式です。
瘻管を切開し、縫合せずに解放します。再発はほとんどなく、根治性の高い治療法と言えるでしょう。

括約筋温存術(くりぬき法)

前側、側方のあな痔の治療に適した術式です。
瘻管をくり抜き、トンネルの入口を閉鎖します。括約筋を切開せず、肛門機能を温存できます。

シートン法

医療用の輪ゴムを用いて瘻管を縛り、2~3カ月をかけて切開します。切開と切開部の治癒を同時進行させるため、輪ゴムに引っ張られて瘻管が肛門へと移動していくイメージです。最後には、輪ゴムが取れます。
輪ゴムを締め直す時には、多少の痛みがあります。